戦前の大分県における

私宅監置患者の健康状態について

○橋本 明 （愛知県立大学文学部）
堀みゆき （帝京平成大学ヒューマンケア学部）
野田武志 （ＮＰＯ法人大分県近現代資料調査センター）
 視察報告』（1910年）より
齋藤玉男：『群馬県管下
精神病者私宅監置状況
私宅監置の患者
第九条 私宅監置室、公私立精神
病院及公私立病院ノ精神病室ハ
行政庁ノ許可ヲ受クルニ非サレ
精神病者監護法と

ハ之ヲ使用スルコトヲ得ス
私宅監置

私宅監置室、公私立精神病院及
公私立病院ノ精神病室ノ構造設
備及管理方法ニ関スル規定ハ命
令ヲ以テ之ヲ定ム
明治三十三年三月
法律第三十八号
 私宅監置調査の代表例
「精神病者私宅監置ノ実況及ビ
其統計的観察」（1918年）

樫田五郎 呉 秀三
（1883-1938） （1866-1932）
「精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計
的観察」の成立過程

齋藤玉男
（1880-1972）
還暦のころ

齋藤玉男：『山梨県管下精神病者私
宅監置状況視察報告』（1911年）
小峰研究所所蔵
 『昭和十五年監置精神病者
に関する綴』の重要度

大分県公文書館所蔵
『綴』には私宅監
置室の見取図や
写真も収められて
いる。
 『綴』を構成する
88の文書群の
『綴』全体（88件、欠2件） 内訳
監置に関するもの（55件）

許可（31件）私宅23・病院8

死亡（18件）すべて私宅

廃止（6件）私宅3・病院3

厚生省関連（14件、欠2件）

他府県から（19件）
 昭和15年
①監置許可に関する患者 （23人）
の大分県
私宅監置
16人 における
病院監置
7人
監置患者
②監置中に死亡した患者 （18人） の内訳
私宅監置
18人

③監置廃止の患者 （5人）
男性
私宅監置
2人
女性
病院監置
この3人は①と重複
性別不詳
 昭和15年の大分県の精神医療事情
• 公立精神科病院 0
• 私立精神科病院 2
①別府脳病院 （別府市、明治31年外科
の朝見病院として開院、後に精神科）
別府脳病院
→現在収容人員 46 （定員128）
②佐藤脳病院 （大分市、昭和12年開院）
→現在収容人員 11 （定員43）
• 私宅監置室 （県内全域）
→現在被監置者数 159
佐藤脳病院
患者データは厚生省『精神病者収容施 （昭和13年ころ）
設調（昭和十五年一月一日現在）』より
 監置許可に関
発病年齢（年代別） する患者 の
14
12 平均 26歳 データ（１）
人数

10 n=22
8
6
診断名
4
2
0
-19 20-29 30-39 40-49 50-
その他
年齢
（5人）
統合失調
そううつ 症圏
病圏 （13人）
注：「統合失調症圏」とは、精神分裂病、精神分 （5人）
離症、早発性痴呆など、「そううつ病圏」とは、躁
鬱狂、躁鬱病などと診断されたものである。 n=23
 監置許可に関
する患者 の
監置開始年齢（年代別）
データ（２）
8
7
平均 32歳
人数

6 n=23
5
4
3
2 発病から監置までの年数
1
0
-19 20-29 30-39 40-49 50-
8
平均6年8ヶ月
年齢 7
n=22
人数
6
5
4
3
2
1
0
1年未満 1-5年 6-10年 11-15年 16年以上

年数
監置中に死亡
した患者 の
データ（１） 監置中に死亡した年齢
（すべて私宅監置）
6

死亡原因とされる病名 5

人数
（すべて私宅監置） 4

2
その他 1
（3人） 精神疾患 0
-19 20-29 30-39 40-49 50-
心疾患 （とその合
（2人） 併症） 年齢
平均39歳
感染症 （10人）
n=18
（3人）
n=18
監置中に死亡
した患者 の
データ（２）
監置開始から死亡までの年数
（すべて私宅監置）

4
人数

1
平均6年4ヶ月
n=10
0
1年未満 1-5年 6-10年 11年以上

年数
『綴』からみる監置患者の平均像

• 26歳で発病、32歳で監置
私宅監置→ 39歳で死亡
病院監置→ 死亡例なし
• 少数だが短期間の監置後に回復例（監置廃止）
• 私宅監置を解除された20人のうち18人が死亡事例