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1–9
Keywords: multicarrier PWM, high-voltage direct drive inverter, cascaded multilevel inverter, deadtime, phase shift
Recently, high-voltage motor direct drive systems have been put Fig. 2 shows the experimental result of a certain conventional
to practical use, and various multilevel PWM strategies have also method which leaves deadtime out of con- sideration. The level-skip
been proposed. This paper describes a multilevel PWM strategy is produced in parts of level transitions. On the other hand, Fig. 3
(our group calls “Carrier Phase Selection (CPS) Method”) that shows that CPS method taking deadtime into consideration causes
has the lowest line voltage harmonic distortion in order to prevent no level-skip. Consequently, this method could improve so that the
the degradation of high-voltage motor winding insulations. This adverse effect of insulated degradation may be reduced as much as
method takes the adverse effect of a deadtime into consideration, possible. It is effective especially when applying to high-voltage
specifically selects the shift direction and determines phase differ- direct drive systems which feed AC motors with high voltage.
ence of carrier waves in accordance with the CPS-definition (which
is not influenced of a deadtime) when the voltage command makes
transition to different level regions in each phase. Therefore, a
favorable output waveform without instantaneous voltage serge is
achieved even if the line voltage level changes. Moreover, the
switching transitions across all switching devices are well-balanced,
so the utilization of inverter unit cells is equalized. It is important
factor when designing the entire system.
Fig. 1 shows simulated waveforms of CPS method. It turns out
that the utilization of single-phase inverter outputs is equalized and
well-balanced switching. Additionally, CPS method gives rise to the
lowest harmonic distortion for the line voltage waveform theoreti- Fig. 2. Experimental result of a conventional method
cally; in fact, output level always changes stepwise without causing (out of consideration of deadtime)
level-skip.
–1–
論 文
デッドタイムの影響を考慮した
高圧電動機直接駆動用多重 PWM 制御法
正 員 只野 裕吾∗ 正 員 漆畑 正太∗
正 員 小倉 和也∗∗ 非会員 紫垣 顕∗∗∗
正 員 野村 昌克∗
A Multilevel PWM Strategy suitable for High-Voltage Motor Direct Drive Systems
in Consideration of the Adverse Effect of a Deadtime
Yugo Tadano∗ , Member, Shota Urushibata∗ , Member, Kazuya Ogura∗∗ , Member,
Akira Shigaki∗∗∗ , Non-member, Masakatsu Nomura∗ , Member
Recently, high-voltage motor direct drive systems have been put to practical use, and various multilevel PWM
strategies have also been proposed. This paper describes a multilevel PWM strategy (our group calls “Carrier Phase
Selection Method (CPS)”) that has the lowest line voltage harmonic distortion in order to prevent the degradation of
high-voltage motor winding insulations. This method takes the adverse effect of a deadtime into consideration, and it
controls the shift direction of a carrier phase. Therefore, a favorable output waveform without instantaneous voltage
serge is achieved even if the line voltage level changes. Moreover, the switching transitions across all switching devices
are well-balanced, so the utilization of inverter unit cells is equalized. It is important factor when designing the entire
system.
From simulation and experimental results, it is shown that this CPS method is particularly effective to high-voltage
motor direct drive systems.
スペース化に大きく貢献している (1)∼(6) 。
1. まえがき
多重 PWM 制御方式についても種々の方式があり,線間
大型のポンプ施設やファン等の高圧電動機を駆動する用 電圧出力の歪みを最小限に低減しつつ,ユニット利用率も
途において,従来は低圧用インバータを用いて電動機制御 均一化した手法がすでに提案されている (14) (15) 。しかしなが
を行い,その出力側で昇圧トランスを介して高電圧に変換 ら,これらの手法では,
していた。そのため,装置全体の大型化と損失増加の欠点 ( 1 ) デッドタイムの影響が明確に考慮されていない
があり,近年の一層高まる省エネルギー要求を満足するに ( 2 ) レベル変化時におけるレベルの異なるパルスの発
至らなかった。このような背景から,現在は多重インバー 生間隔に関して考慮されていない
タを用いた高圧インバータシステムが実用化されているが, ( 3 ) 電圧指令パターン生成にデータテーブルが必要 (15)
その中でも,直列多重化したインバータユニットでマルチ 等の課題がある。特に,( 1 )のデッドタイムの影響で発生
レベルインバータを構成し,昇圧トランスや出力フィルタ するレベル 2 段分のサージと,( 2 )の連続的なパルスレベ
を介さずとも高電圧パルスで直接電動機を駆動できる高圧 ルの変化は,電動機巻線の絶縁劣化に悪影響を及ぼす「パ
ダイレクトインバータが広く適用され,省エネルギー・省 ルスの変化幅」や「dV/dt」を増加させ (16) ,既設電動機への
∗(株)明電舎
経年的な影響や信頼性向上の観点から完全に抑制すること
研究開発センター総合研究所
〒 141-8565 東京都品川区大崎 2-1-17 が望ましい。
Central Research Laboratory, R&D Center, そこで筆者らは,上述した問題を解決するために,線間電
MEIDENSHA CORPORATION 圧レベルが切り替わる瞬間の挙動に着目し,新しいプロセ
1-17, Ohsaki 2-Chome, Shinagawa-Ku, Tokyo 141-8565
∗∗(株)明電舎 装置事業部技術開発部 スによる PWM 手法を開発した。本論文の提案方式では,
∗∗∗(株)明電舎 装置事業部システム装置工場 ( 1 ) デッドタイムの影響によるサージの完全な抑制
( 2 ) レベル変化時の連続的なパルスの間隔の改善
( 3 ) データテーブル等を用いない簡単なロジック構成
を実現している。また,定常的な電圧指令変化のみでなく,
電流制御等を行った際の過渡的な変化についても,キャリ
アの傾き以下の電圧指令変化率であればサージを発生する
ことなく追従できることを述べ,シミュレーションと実験
結果から,本方式が高圧ダイレクトインバータ制御法とし
て有効な一手段であることを示す。
2. 主回路構成
図 1 に主回路構成を示す。入力では多相巻線変圧器を介
して電源側高調波を抑制しており,その 2 次側を単相 PWM
図 3 PD 方式のシミュレーション波形
インバータユニットにそれぞれ接続する。単相インバータ
Fig. 3. Simulated waveform of PD-method.
では 1.7 kV 耐圧の IGBT を用い,3,300 V 受電の場合はユ
ニットを各相で 3 段直列とし,6,600 V では 6 段直列とし
て 3 相を Y 結線する。直列多重化方式として一般的に広く おり,単相インバータ 1 ユニットの直流リンク電圧 Vdc の
用いられている回路構成 (7) で,段数は任意であるが,本論 幅となる。3 段直列 7 レベルならば,図 2 に示すように各
文では 3 段直列 7 レベルを基本として,制御手法について 相で 7 つの境界レベルと 6 つのレベル領域が存在する。ま
述べる。 た,各相電圧指令は,電圧利用率改善のため 3 次高調波加
算したものを用いる。
3. 多重 PWM 制御方式
〈3・2〉 Phase Disposition(PD 方式)(8)∼(10) (12) (15) PD 方
多重 PWM 制御方式には,APOD(Alternative Phase Op- 式は,図 3 で示すようにレベル領域毎に同位相のキャリア
position Disposition)
,POD
(Phase Opposition Disposition)
, を配置し,電圧指令との比較を行う。3 段直列の場合は 6 つ
Discontinuous PD(Discontinuous Phase Disposition)等の のキャリアを配置する。図 3 は,PD 方式のシミュレーショ
PD(Phase Disposition)方式 (8)∼(10) と呼ばれるものと,PS ン波形(キャリア周波数 2 [kHz],電圧指令 50 [Hz],デッド
(Phase Shifted)方式 (9)∼(11) と呼ばれるものの 2 つに大きく タイムなしの理想条件)であるが,この方式は線間電圧歪
分類される。また,両者の欠点を補完するために,主回路構 みを最も低減できる手法としてよく知られており,相電圧,
成や制御を Hybrid 型としたもの (9) (12) (13) ,キャリア配置を加 線間電圧ともにパルスの電圧変化幅は常に直流電圧 Vdc,
(14)
工したもの ,VCD(Voltage Command Distribution)方 つまり 1 レベル領域の幅となる。しかしながら,各段の単
(15)
式 のように電圧指令を配分したものなど,PD/PS 両方式 相インバータのスイッチング動作は電圧指令の大きさに依
から派生したいくつかの改善手法が提案されている。ここ 存しているため,ユニット間でスイッチング回数が異なる。
では,提案方式との比較のため,基本となる PD 方式と PS デバイス寿命や損失のバランスが取れないことは,システ
方式について説明する。 ム全体を設計する上で憂慮され,インバータユニット利用
〈3・1〉 レベル領域と電圧指令 各方式を説明する前 率均一化の観点からは好ましくない。
に,図 2 で示すような「レベル領域」を定義する。レベル 〈3・3〉 Phase Shifted Carrier(PS 方式)(9)∼(12) (15) PS
領域とは,境界となるレベルで区切られた範囲を意味して 方式は,図 4 で示すように PD 方式と異なり,レベル領域
図 6 相電圧と線間電圧の関係
Fig. 6. Relations between Phase & Line voltage.
〈4・1〉 概 要 本節では,提案する搬送波位相選択
方式(Carrier Phase Selection Method:以下,CPS 方式と PD 方式と同様に全段で一致するため,2 段変化防止条件
呼ぶ)の基本的な考え方について説明する。 (1)
を満たすことができる。また,使用する仮想キャリア
まず,図 4 で示した PS 方式のキャリア群(以後,
「原キャ 群の基となっているのは PS 方式のキャリア群であるため,
リア群」と呼ぶ)を用意する。それと同時に原キャリア群 実際はスイッチングがユニット順に行われ,特定ユニット
◦ への集中を回避できる。したがって,CPS 方式は PD 方式
に対して基準線間隔の半分の位相(3 段直列の場合は 30 )
◦
「30 シフトキャリア群」
をシフトしたキャリア群(以後, と PS 方式の両者メリットを生かした多重 PWM 制御法と
と呼ぶ)も予め生成しておく。3 段直列の場合,計 12 本の いえる。
キャリアを用意することになるが,電圧指令比較対象キャ 〈4・2〉 デッドタイムの影響と位相選択 制御アルゴ
リアとして用いるのは常に 6 本であり,電圧指令値が奇数 リズムを実装する際,インバータ上下アーム短絡防止のた
レベル領域に存在するときは原キャリア群,偶数レベル領 めにデッドタイム期間を設ける。デッドタイムが相電圧パ
域では 30◦ シフトキャリア群を使用するように切り替える。 ルスに与える影響は,デッドタイム設定値,デバイスの特
図 7 は CPS 方式における切り替え済みのキャリア群配置 性,負荷電流極性等に依存するが,例えば,図 9 のように
を各レベル領域で表現したもの(以後,各段で見たキャリ 電圧指令がレベル領域 5 から 6 に移行する時のデッドタイ
アを「仮想キャリア」と呼ぶ)で,図 8 は電圧指令値に応 ムの影響を考える。図中,gate11 とは図 1 における単相イ
じて変化する比較対象キャリアの様子を全段で示したもの ンバータユニット 1 段目のスイッチ Sw1 用のゲート信号を
であるが,表現方法が異なるだけでどちらも意味は同じで 意味しており,他も同様である。ゲート信号,各段単相イ
ある。図 8 のとおり,実際に使用する比較対象キャリアは, ンバータ出力,相電圧波形の着色部は,デッドタイムによ
レベル領域変化時に位相が切り替わる連続した波形となる る遅延期間を表している。
ので注意されたい。また,図中の carrier11 とは,図 1 にお 図 9(a) は,領域移行後に左に 30◦ シフト,(b) は右に 30◦
ける単相インバータ 1 段目のスイッチ Sw1 で使用する比較 シフトした場合であり,理想的には同じ相電圧波形が得られ
対象キャリアを意味しており,各相共通である。carrier14 る。ここで,(b) の場合の領域移行の瞬間に gate11,gate21
は 1 段目の Sw4,carrier21 は 2 段目の Sw1,…といった が入れ替わるようにゲート変化している箇所に注目する。
形でレグ数分 6 本を用意する。Sw2,Sw3 のゲート信号は 理想条件であれば相電圧波形に影響を与えないが,実際は
Sw1,Sw4 の反転値を用いるので,キャリアは不要となる。 ゲート信号の立ち上がり等でデッドタイム期間を作成する。
図 7 から分かるように,CPS 方式の仮想キャリア位相は その結果,単相インバータ出力は負荷電流極性に応じて,
表 1 領域移行モードの定義
Table 1. Trans-region mode.
図 10 領域移行時の
仮想キャリア領域分割
Fig. 10. Regional
division of virtual
carrier.
(a) 30 deg Left-shift (b) 30 deg Right-shift
図 9 キャリア群のシフト方向とデッドタイムの影響
Fig. 9. Adverse effect of a deadtime.
立ち上がりもしくは立ち下がりで遅延を生じることになる。
図 9(b) の例では,領域移行時に 2 段目ユニット出力の立ち
上がりが遅れており,その影響で相電圧出力も 1 レベル低
下している。このときの相電圧パルス位相の型に着目する
と,凸中央より左側で立ち下がる条件が含まれるため,2 段
(2)
変化防止条件 を満たすことができない。一方,(a) の場
合は領域移行の瞬間にゲート変化がないのでパルス位相の
型を崩すことはない。したがって,図 9 の領域移行条件で
は左に 30◦ シフトしたキャリア群を選択制御すればよい。
言い換えると「電圧指令のレベル領域移行と同時にゲート
変化を伴わない」ことが 2 段変化の防止条件となる。
図 11 CPS 制御部のブロック図
同様に,そのほかの領域移行条件についてまとめると,
Fig. 11. Block diagram of CPS control process.
図 10 および表 1 のようになる。図 10 は,電圧指令が領域
移行する際に対象となる 2 つのレベル領域と仮想キャリア,
および仮想キャリアの山と谷の位置で領域を R1∼R8 に分 で電圧指令を更新していた (17) 。この位置でステップ変化幅
割した定義を示している。表 1 は,電圧指令がどの領域か を 1/2 段分に制限して更新すれば,仮想キャリアと交差す
らどの領域に移行したのかをモード分けして,そのときの ることなく領域移行できる。しかしながら,1/2 段という
相電圧レベルの変化とシフト制御すべき方向を示している。 ステップ変化幅制限があるため,キャリア周波数を高くし
この表から分かるように,ゲート変化を起こさないモード て制御性能を補う必要があった。
は 4 つのみで,R2 と R5 もしくは R3 と R8 の間で領域を そこで,本論文では変化率制限手法を新たに取り入れた。
移行すれば,デッドタイムの影響による 2 段変化は基本的 図 12(a) は,仮想キャリアの山と谷で電圧指令を更新して
に発生しない。 ステップ変化させた場合,(b) は (a) のステップ変化に対し
図 11 に,搬送波位相選択制御部のブロック図を示す。 てキャリアと同じ傾きの変化率制限を付加した場合のゲー
表 1 の条件は,仮想キャリアのカウントアップ/ダウン中 ト信号および相電圧波形を示している。(a) の場合,山と
を判別するフラグと電圧指令値の変化方向の ExOR を用い 谷で更新するため,領域移行時に必ず仮想キャリアと交差
て位相をシフトする左右方向を決定できるため,非常に簡 してしまう。この例では,Mode5 の禁止モードで移行して
単なロジック構成となり,データテーブル等は不要である。 いるので,相電圧パルス位相の型を見ると,デッドタイム
これを,各相で独立に用意して選択制御すればよい。 の影響を受けて凸中央より右側で立ち上がりエッジを発生
〈4・3〉 電圧指令更新タイミングと変化率制限 表1 し,2 段変化防止条件
(3)
を満たせない。一方,(b) のよう
の禁止モードを確実に回避して領域移行するために,当初 に,ステップ変化時にクッションを設けた場合は Mode8 で
は,図 9 で示したように仮想キャリアの山と谷の中間位置 領域移行するため,ゲート変化,相電圧レベル変化は発生
のパルスを出力し,2 段変化防止条件
(3)
を満たせない。そ
こで,図 13(a) 右図のように,レベル境界近傍に禁止帯を
設定し,電圧指令値が入力されないように補正する。禁止
帯幅(片側分)H は,以下の式で求められる。
H = 4M · f c · T d · Vdc · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (1)
(a) non-RC limit (b) RC-limit
この補正により,gate11 は凸中央線より左側で立ち上がる
〈4・3〉節
ため,極小幅パルスの問題を回避できる。ただし,
で述べた電圧指令変化率制限を併用する場合,図 13(b) の
太線部で示すような禁止帯内のキャリアと交差しないよう
に注意する必要がある。図 13(b) 左図の例では,変化率制
限中の電圧指令が禁止帯太線部と交わるため,凸中央線よ
り右側で立ち上がり,2 段変化を発生する要因となってい
る。図 14 は,この問題も考慮に入れ,禁止帯および禁止帯
内で交差してはならないキャリア(太線部)を総合的に示
(a) forbidden band (b) forbidden of line crossing
したものである。
図 13 極小幅パルス問題と電圧指令禁止帯の設定
電圧指令を変化率制限して仮想キャリアの山と谷で更新
Fig. 13. Compensation of the adverse effect of narrow
する場合,ステップ変化を (Vdc − 2H) で制限すれば,基本
pulse width by forbidden band setting.
的に上述した禁止帯内のキャリアと交差する問題は発生し
ないが,あくまで原理的な限界(2 段変化防止条件
(4)
)で
せず,領域移行時にデッドタイムの影響を受けない。また, ある 1 段分 Vdc のステップ変化まで許容するようにしたい
文献 (17) の手法のようにステップ変化幅が 1/2 段分に制限 ときは,図 15 のように更新タイミングを調整すればよい。
されることもなく,1 段分まで拡張可能である。このこと すなわち,仮想キャリアの山と谷の位置から T d だけ前に
は,後述するキャリア周波数の最小化に貢献する。 ずらした位置で毎回更新することで,1 段分のステップ変
なお,変化率制限により電圧指令値に遅れが生じ,若干 化まで拡張できる。
のパルス誤差の原因となるが,高圧ダイレクトインバータ この極小幅パルス禁止帯の設定は,2 段変化防止条件
(2)
が用いられるファン/ポンプ等の駆動用途においては極め に対しても深く関係する。図 16 は,図 6(e) の条件である
て微小な影響である。 が,禁止帯幅 H を決定する際に使用した遅延設定時間 T d
〈4・4〉 極小幅パルスの問題とその回避手法 CPS 方 の 2 倍の期間が,連続パルス間隔の最小値として保証され
式における仮想キャリアの頂点は,実際は 2 種類のキャリ ることを示しており,この T d の設定次第で疑似 2 段変化
アが交差する点であるので,その頂点近傍,つまり境界レ の最小間隔も決定することができる。
ベル近傍に電圧指令が入力された時には極小幅の相電圧パ また,極小幅パルス禁止帯を回避する際に補正した電圧
ルスを出力する。例えば,図 13(a) 左図の場合,デッドタイ 値を他の相にも等しく加減算し,3 相電圧指令の平均値バ
ムの影響で gate11 が凸中央線を越えて右側で立ち上がる。 ランスを維持する処置をとる。図 17 は,U 相指令が禁止帯
その結果,相電圧は本来出力すべき方向と逆向きに極小幅 に入った場合に 3 相零相変調した様子を示している。図 18
5. シミュレーションおよび実験結果
本論文では,動作確認するための実験装置として,低圧
の汎用インバータを用いて,図 1 のシステムを構成した。
図 20 に,デッドタイムの影響を考慮した CPS 方式の
シミュレーション波形(キャリア周波数 1 ユニットあたり
図 21 デッドタイムの影響を考慮しない場合の
400 [Hz],総合 2.4 [kHz],電圧指令周波数 50 [Hz],デッド
実験結果
タイム 5 µs)を示す。各段のユニット利用率は均一となり, Fig. 21. Experimental result of a conventional method
相電圧,線間電圧出力ともに全領域で 2 段変化および疑似 (Out of consideration of t Deadtime).
2 段変化のない波形が得られる。
図 21 は,デッドタイムを考慮せずにキャリア群を固定し
て PWM 制御した場合の線間電圧実験波形例(シミュレー
ションと同条件)である。パルス位相の型を一致させてい
るため,基本的には PD 方式と同様の波形が得られるが,線
間電圧レベル切り替わりでデッドタイムの影響,極小幅パ
ルス問題等を受けて,各所で 2 段変化および疑似 2 段変化
によるサージを発生している。
図 22 は,デッドタイムを考慮した CPS 方式の線間電圧 図 22 デッドタイムの影響を考慮した CPS 方式
実験結果
波形実験結果(シミュレーションと同条件)である。キャ
Fig. 22. Experimental result of CPS method (In consid-
リア位相を適切に選択制御した結果,レベル移行時の細か eration of Deadtime).
い 2 段変化がなくなるとともに,疑似 2 段変化についても
抑制しており,シミュレーション結果と同様にサージのな
い良好な線間電圧波形が得られた。参考として,図 23 は
高圧ダイレクトインバータ製品の線間電圧波形例である。
CPS 方式適用による巻線絶縁劣化の改善度の測定に関し
ては今後の課題としたい。また,電圧歪み率に関しては理
論的に PD 方式と等しいため,参考文献 (8)∼(10) を参照され
たい。
6. あとがき
図 23 高圧試験波形例(製品:明電舎
高圧ダイレクトインバータの多重 PWM 制御法として, THYFREC-VT710)
従来のインバータユニット利用率均一化と電圧歪み低減性 Fig. 23. Output Line Voltage 6600 V, 60 Hz Product
“THYFREC-VT710” MEIDENSHA CORPORATION.
能に加え,レベル切り替わり時のデッドタイムの影響によ
る新しい制御方式を提案して動作確認を行った。 明電舎に入社。現在,総合研究所に所属し,パワー
エレクトロニクスに関する研究開発に従事。
ファン/ポンプ駆動へのベクトル制御適用も基本的に可
能であり,特に電圧指令変化率制限の範囲内の変動であれ
ば,線間電圧サージを発生することなく追従制御すること
ができる。
(平成 16 年 7 月 12 日受付,平成 17 年 8 月 5 日再受付)